食事術

認知症予防・ボケ防止に欠かせない栄養素と食べ物とは?

これまで当ブログでは、日本人の主な死因である、癌や糖尿病といった生活習慣病について情報を発信してきました。

しかし、人生を楽しんでいくためには、ただ長生きするだけではいけません。

自力で生活できる状態(健康寿命)を長く保つことが大切です。

そして、認知症は、高齢者が要介護状態になる大きな原因のひとつです。

健康寿命を延ばしていつまでも元気に過ごすためには、早いうちから認知症の予防につとめることが大切です。

現在、認知症を100%防ぐ方法は見つかっていませんが、毎日の食事や生活に注意すれば認知症のリスクを下げられます。

今日は食事や栄養の側面から、認知症予防・ボケ防止についてお伝えします。

認知症ってどんな病気?

認知症

認知症は、何らかの原因で脳の神経細胞の働きが妨げられて起こる症状・状態です。

脳のしくみと認知症の関係

脳の神経細胞は、凹凸が組み合わさったような形の接合部「シナプス」によってつながれています。

ある脳神経細胞に刺激が加わると、その脳神経細胞につながるシナプス小胞(シナプス凸部の先端)から神経伝達物質が放出されます。

神経伝達物質が受容体(シナプス凹部の内側)に届くと、隣の脳神経細胞に刺激が伝わります。

この繰り返しによって脳の広範囲に刺激(情報)が伝わり、複雑な思考や動作ができるようになります。

認知症は、この一連の脳の情報伝達が妨げられて思考・行動に支障が出た状態を指します。

認知症の症状・兆候リスト

以下に思い当たる場合は、認知症のサインかもしれません。

なるべく早い段階で、医師などに相談しましょう。

  • 新しいことを覚えられなくなる
  • 同じ行動・質問を何度も繰り返す
  • ついさっき話した相手の名前や顔を忘れる
  • 運転・家事や簡単な計算などのミスが増えた
  • 知っている道・場所なのに迷うことがある
  • 以前と比べて性格が変わったように見える
  • それまで好きだった物事への興味を無くす
  • 身だしなみにかまわなくなる

認知症以外にも、抑うつ・意識障害・薬の副作用などで似た症状が出ることがあります。

安易な自己判断は避け、必ず専門家に相談しましょう。

うっかり・モノ忘れと認知症の違い

脳の老化にともなってモノ忘れが起こることもありますが、単なるモノ忘れと認知症は別物です。

モノ忘れは物事の一部だけを忘れるため、何らかのヒントがあればたいてい思い出せます。

たとえば、昨日食べた夕食のおかずが思い出せないとき、「昨日は魚を食べましたよ」と誰かに教えられれば「昨晩は魚を食べたんだった」と思い出すことができます。

一方で、認知症は物事を丸ごと忘れるため、本人には何かを忘れたという感覚がありません。

認知症になると昨日夕食を食べたこと自体を忘れてしまい、「昨日は夕飯を食べなかった」と思い込むようになります。

また認知症の場合は症状がどんどん進行し、判断力・思考力も低下して、日常生活に支障をきたすようになります。

三大認知症について

認知症,アルツハイマー,レビー小体型認知症,血管性認知症

認知症は、その原因となる病気によって症状が異なります。

認知症の約8割は、以下のいずれかにあてはまります。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の半分近くを占めています。

海馬を中心とする脳の神経細胞がたんぱく質異常によって傷つき、脳が萎縮するのが特徴です。

アルツハイマー型認知症の初期症状

軽いもの忘れから始まることが多く、次第に新しいことを記憶しにくくなります。

最初は身近な人にしかわからない程度の症状が、少しずつ進行していきます。

  • 同じ発言・行動を繰り返す
  • 直前に見聞きしたもの・食べたものを忘れる
  • 物とられ妄想(物を盗まれたと思い込む)
  • 失敗を取り繕うための作り話をする
  • それまで好きだった物事に興味がなくなる

アルツハイマーが進行したときの症状

記憶力・判断力・思考力が低下し、日常生活に支障をきたすようになります。

体は動かせても、家事の手順がわからなくなる・徘徊するなどの行動症状が増えていきます。

さらに症状が進むと、歩く・座るといった動作もできなくなり寝たきりになります。

レビー小体型認知症

脳の神経細胞の中に、異常なたんぱく質の固まり(レビー小体)が発生します。

レビー小体が脳内に増えることで神経細胞の働きが妨げられ、認知症を発症します。

アルツハイマー型認知症と違って、脳の萎縮はそれほど見られません。

思考力・判断力がしっかりしている時と、思考力が落ちてぼーっとしている状態が、数時間・数日ごとに入れ替わるのが特徴です。

レビー小体型認知症のおもな初期症状

初期段階では、モノがゆがんで見えたり、注意力が低下したりします。

また、約5割の確率で無気力・落ち込みなどの抑うつ症状が見られます。

実際に存在しないものがはっきり見えたり、見えているものを別のものと見間違ったりすることもあります。

レム睡眠中に、大声で叫んだり暴れたりすることもあります。

パーキンソン症状

動作が遅くなる・表情や筋肉がこわばる・前かがみで小刻みに歩くなど、パーキンソン病に似た症状が表れます。

最初にパーキンソン病と診断された後で、レビー小体型認知症と診断されるケースもあります。

自律神経症状

自律神経の働きが低下し、さまざまな身体症状が起こります。

めまい・立ちくらみ・多量の発汗・だるさ・頻尿など、症状は多岐にわたります。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血などで脳血管に障害が起こり、その周辺の神経細胞が傷ついて発症します。

障害の程度・箇所によって症状が異なりますが、血管性認知症のおもな特徴は以下の通りです。

まだら認知症

血管性認知症の場合、脳が損傷している部位とそうでない部位が混在しています。

そのため、できることとできないことがはっきり分かれているケースが多いです。

また、突然認知機能が低下することもあります。

意欲の低下・感情の起伏が激しくなる

物事への意欲や自発性が低下し、落ち込みやすくなります。

反対に、小さなきっかけで興奮して取り乱すこともあります。

神経症状

脳の損傷部位や程度によっては、手足の麻痺・しびれや言語障害などが起こることがあります。

認知症予防に役立つ栄養素・食べ物

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現時点では、認知症を防ぐ方法ははっきりわかっていません。

しかし、以下の栄養素が認知症の発症リスクを下げることがわかっています。

特定の食材ばかりに偏らないで、いろいろな食材からまんべんなく栄養素を摂りましょう。

DHA・EPA

DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、青魚などに含まれる不飽和脂肪酸です。

DHAとEPAは、以下の魚に多く含まれています。

  • いわし
  • さば
  • さんま
  • あじ
  • かつお
  • まぐろ(特にトロ・目玉周辺)
  • うなぎ

DHAとEPAのおもな違い

DHAは、シナプスの働きを助け、情報処理能力を高めると考えられています。

この作用が、アルツハイマー型認知症の予防に役立ちます。

EPAには、悪玉コレステロールを減らして血液をサラサラにする効果があると考えられています。

この作用が、血管性認知症の引き金となる脳卒中などの予防に役立ちます。

また、EPAは体内でDHAに変換されることもあります。

魚の缶詰からもDHA・EPAを摂れる

小骨の多い魚が苦手な人には、魚の缶詰がおすすめです。

骨までやわらかく煮てあるので丸ごと食べることができ、DHA・EPAとともにカルシウムも手軽に摂れます。

面倒な下ごしらえがいらないので、料理の手間も省けますね。

α-リノレン酸

不飽和脂肪酸の一種であるα-リノレン酸は、体内で代謝されてDHA・EPAに変化します。

α-リノレン酸は、一部の植物油やくるみなどに多く含まれています。

  • 亜麻仁油
  • えごま油
  • くるみ
  • なたね油

レシチン

レシチンは、神経伝達物質・アセチルコリンを作るのに欠かせない成分です。

レシチンを十分摂ることで、記憶力を保つ効果があると考えられています。

レシチンは、以下の食材に多く含まれています。

  • 大豆製品
  • 卵黄
  • うなぎ
  • レバー
  • ぎんなん

https://doctor-health-food.com/posts/224/

葉酸

葉酸が不足すると、体内でホモシステイン(悪玉アミノ酸の一種)が増加しやすくなります。

ホモシステインは、アルツハイマー型認知症を引き起こす脳の老廃物質・アミロイドβの作用を強めます。

また、ホモシステインは動脈硬化を悪化させ、脳卒中などのリスクを高めます。

葉酸は、以下の食材に多く含まれています。

  • 緑黄色野菜(小松菜、ほうれん草など)
  • 豆類(枝豆、空豆など)
  • 果実類(いちご、キウイ、柑橘類など)

https://doctor-health-food.com/posts/51/

トリプトファン

トリプトファンは、睡眠をつかさどる脳内物質(セロトニン・メラトニン)の材料となります。

トリプトファンを十分摂ることで、睡眠の質を高め、脳の健康を保つのに役立ちます。

トリプトファンは体内で合成できない必須アミノ酸なので、食べ物からしっかり摂る必要があります。

以下の食材を積極的に摂って、トリプトファンを補いましょう。

  • 牛乳・乳製品
  • ごま・ナッツ類
  • 豆・豆製品
  • 肉類(牛・豚・鶏)
  • 果物類(バナナ、アボカドなど)
  • 魚卵(筋子、たらこなど)
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クルクミン

ウコン(ターメリック)に多く含まれるクルクミンには、記憶力の低下を抑える効果があります。

カレーを食べることで、ウコンを手軽に摂ることができます。

ウコンの消費量が多いインドでは、アルツハイマー型認知症の人が少ないと言われています。

テアニン

テアニンは、緑茶に多く含まれるうまみ成分です。

テアニンは脳の神経細胞を保護し、認知症の発症・悪化を抑えると考えられています。

また、テアニンには血圧上昇を防ぐ効果があります。

この効果によって、脳卒中などのリスクを下げることができます。

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認知症予防に役立つ生活習慣

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認知症のリスクを下げるためには、食事だけでなく毎日の行動にも気を配りましょう。

認知症を防ぐための生活習慣は、ストレスを解消して毎日楽しく過ごすためにも役立ちます。

積極的に人と会って話す

ずっと家に閉じこもっている人より、交友関係が広い人のほうが認知症になりにくいと言われています。

いろいろな人と会ってさまざまな内容の会話を楽しむことで、脳に刺激を与え続けることができます。

知的行動習慣を身につける

複雑な思考や指先の細かい動きを繰り返して、脳に刺激を与え続けましょう。

趣味が多い人や趣味を深く極めている人は、交友関係も広がりやすくなるでしょう。

  • 文章を読む
  • 文章を書く(俳句・短歌などもよい)
  • ゲーム(囲碁・将棋など)
  • パズル類(クロスワードパズル・立体パズルなど)
  • 博物館・美術館に行く
  • ハンドクラフト(編み物、裁縫など)

定期的な有酸素運動

認知症予防には、週3日以上の有酸素運動も効果的です。

酸素を体内に取り入れ続け、脳の血流を良くすることが認知症予防に役立ちます。

また、景色を見ながら歩く・自転車をこぐといった複雑な動作によって脳を鍛えることもできます。

病気などで運動が難しい人は、無理をせず事前に医師に相談しましょう。

気負いすぎないことが長続きのコツ

「毎日ウォーキングをしよう」などと気負いすぎると長続きしにくく、ストレスもたまりやすくなります。

「ちょっとそこまで」の軽い散歩や、用事のついでに少し歩くくらいの気持ちで始めるとよいでしょう。

睡眠習慣を整える

睡眠の質を高めることで、脳にたまったアミロイドβの排出をうながすことができます。

起床後2時間以内に太陽の光を浴びて、脳をしっかり目覚めさせましょう。

まず目覚めを良くすることで生活にメリハリができ、夜はぐっすり眠れるようになります。

日中に有酸素運動をすると、ほどよく体が疲れて眠りやすくなるでしょう。

まとめ

認知症,運動

認知症は、脳の神経細胞の働きが妨げられて起こる症状・状態です。

認知症の約半分を占めるアルツハイマー型認知症をはじめ、さまざまな種類の認知症が知られています。

毎日の食事で認知症のリスクを下げるには、DHA・EPAを含む青魚やレシチンを含む大豆製品・卵などを積極的に摂ることが大切です。

さらに、人との交流・運動習慣・知的行動習慣などで脳に刺激を与え、脳の健康を保ちましょう。

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